論文公開
研究番号
AYA世代がんサバイバーの仕事の変化による健康関連QOLへの影響についてのWEBアンケート調査結果
がん治療と仕事の両立はがんサバイバーシップの重要なテーマです。AYA世代(Adolescent and Young Adult, 若年成人)はおおよそ15~39歳くらいを指し、初めての就職、仕事に関するスキル獲得、資産形成など、仕事にかかわる様々なことが生じる重要な時期といえます。診断や治療に関連して仕事を失ったり、雇用形態が変わったりした場合、賃金、医療保険、福利厚生の変化だけでなく、心理・社会面に影響を及ぼすことが報告されています。
【研究目的】
本研究は、AYA世代がんサバイバーの仕事の変化と健康関連QOLの関連を明らかにすることを目的としました。
*健康関連QOLとは、身体の痛みや不安など、人の健康に直接影響する部分に関連して変化する生活の質を表します。
【研究方法】
AYA世代がんサバイバーを対象に全国WEBアンケート調査を実施し、健康関連QOLに影響を及ぼす要因について統計学的に解析しました。
【アンケート内容】
健康関連QOLを調べる項目は、EQ-5D-5L (日本語版)という調査票を用いて、次の5項目を尋ねました:(1)日常生活での移動能力、(2)日常生活での着替え・入浴・食事など身の回りのこと、(3)仕事・学業・家事など日常生活の通常の活動、(4)痛みや不快感をどの程度感じているか、(5)不安やふさぎ込みをどの程度感じているか。回答は、①問題なし ②少し問題あり ③中程度の問題あり ④かなり問題あり ⑤極度の問題あり から1つ選択し、得点範囲は-0.025から1.000で、得点が高いほど健康関連QOLが高いと判断します。
仕事に関する項目は、現在の仕事の状況、収入の変化を尋ねました。
そのほかに健康関連QOLに影響を及ぼす要因は、年齢、性別、婚姻状況、同居者、育児・介護の有無、学歴、がんの種類、診断時の年齢、診断からの期間、化学療法の有無、日常生活の制限の程度(0:全く問題なく日常生活が制限なく行える~4:全く動けずベッドやいすで過ごし身の回りのことはできない)を尋ねました。
【結果】
アンケート回答者はAYA世代 がんサバイバー 206 名(女性 180 名, 87.4%)で平均33.7(22-39)歳でした。
仕事の変化
回答者のうち115人(56%)はがん診断後に仕事の変化を経験し、退職53人(25.7%)、休職50人(24.3%)、転職22人(10.7%)、労働時間短縮20人(9.7%)、解雇2人(1%)でした。
健康関連QOL
健康関連QOLの平均得点は、回答者全体で0.79、就労変化があったグループは0.75、変化がなかったグループは0.84でした。
健康関連QOLと仕事の変化
AYA世代がんサバイバーの健康関連QOLを低める要因は、収入の低下、労働時間の短縮、日常生活の制限でした。
【結論】
仕事の変化は、AYA世代がんサバイバーの健康関連QOLを低める可能性が示されました。近年、がんサバイバーのQOL向上を目指し、がん治療と仕事の両立に向けた医療と職域の連携や多職種連携など様々な政策や取り組みが注目されています。がん医療に携わる医療従事者と職場が連携し、がん患者が治療と仕事との両立を継続できる環境づくりが重要だと考えられます。
- 研究課題
- Financial toxicity(経済的毒性)に着目したがんサバイバーの治療と生活の両立のための支援プログラムの開発
- 研究番号
- 承認審査なし
- 承認日
- 領域
- 就労, 経済毒性, AYA世代
- 対象
- AYA(Adolescent and Young Adult, 若年成人):およそ15~39歳くらいの世代
- 目的
- AYA世代がんサバイバーの仕事の変化と健康関連QOLの関連を明らかにすること
- アウトカム
- 健康関連QOL
- デザイン
- 横断研究
- 責任研究者
- 藤森麻衣子
- 研究費
- 国立がん研究センター研究開発費(2022-A-22), がんサバイバーシップ 研究支援事業(一般), 公益財団法人日本対がん協会リレー・フォー・ライフ・ジャパン 「プロジェクト未来」研究助成, KAKENHI [grant number 21K17239, 20K23216]
- 論文一覧
Goto S, Itani Y, Fujimori M, et al. Impact of work-related changes on health-related quality of life in adolescent and young adult cancer survivors. Journal of Psychosocial Oncology Research and Practice 2024;6(1):126. doi: 10.1097/or9.0000000000000126
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